新しい保守のかたち――従来の保守政党との違いを比較する

保守政党が乱立する現代日本において、2020年に誕生した参政党は「新しい保守」の象徴として注目されています。自民党や日本維新の会、国民民主党、さらには日本保守党といった既存の政党と比べて、参政党は何が違い、どこが共通するのか――その特徴をテーマごとに比較します。

「上からの保守」vs「下からの保守」――出自と運営スタイルの違い

自民党や維新といった既存の保守政党は、政治家や官僚出身者が中心で、既存の政治ネットワークや資金基盤をベースに築かれてきた、いわば“上からの保守”です。
とくに自民党は1955年体制以来、財界や官僚機構、業界団体と密接に連携し、長期与党の地位を維持してきました。

これに対し参政党は、まったく逆のアプローチ。“市民が政策をつくり、政治家を育てる”を理念に掲げ、党員やボランティア主体の草の根運動を徹底しています。
たとえば「政党DIYワークショップ」では、全国の支持者が議論し、その意見を実際の政策へ反映。自民党や維新のトップダウン型とは対照的に、オープンで参加型の運営を特徴としています。

このような背景から、参政党の支持層には無党派や元リベラル層も多く、「保守思想」よりも「政治に参加すること」自体に強い関心を持つ人が多いのも特徴です。

経済政策――「地に足のついた保護主義」とグローバル化への懐疑

参政党の経済政策は、「保守=市場主義」という従来のイメージとは一線を画します。
自民党が成長戦略や法人減税による大企業誘導を志向し、維新の会が規制緩和・小さな政府を目指すのに対し、参政党は「中小企業と農林水産業こそが経済の基盤」と主張。

主な経済政策としては、

  • 消費税廃止・減税による国民負担軽減

  • 国内生産の回復を目指す「内需経済志向」

  • 教育・医療・農業への大胆な財政投資(例:教育国債の発行)

など、「ポスト新自由主義」路線を打ち出しています。

また、党の調査によれば、公認候補の98%が「自由貿易よりも国内産業保護を優先すべき」と回答しており、一種の“経済的ナショナリズム”とも言えます。

このスタンスは、グローバル化の恩恵を受けられなかった地方の農業者や中小企業、家計に苦しむ子育て世代から強い支持を得ています。

外交・移民政策――「国益優先」と独立志向の強さ

参政党の「日本人ファースト」は、単なる排外主義ではなく、「国の独立性」にこだわる強い姿勢が特徴です。
具体的には、

  • 外国人労働者受け入れ拡大に約94%が反対

  • 水源地や離島・不動産の外国資本買収を法的に制限

  • WHOや国連など国際機関に対しても「主権の侵害」と警戒

などの政策を掲げています。これは「日本が他国に依存しすぎている」という国民の不満を反映しています。

自民党も移民政策には慎重ですが、経済界の要請を受けて高度人材や技能実習生の受け入れを推進。一方、維新や国民民主は、実利や制度整備を重視する現実路線です。
参政党はグローバリズムや多国間条約への懐疑が強く、「戦後体制そのものへの疑問」を抱える点で他党と一線を画します。

教育・子育て政策――“精神の独立”を重視する新保守

参政党は教育分野において「精神の独立なくして経済の独立なし」という考えを前面に打ち出します。
文部科学省が進める多様性教育や自己肯定感の育成に対して、「国と郷土に誇りを持つ教育」や「道徳心の再建」を重視。

具体的には、

  • 「自虐史観」からの脱却(教科書改革)

  • 教育勅語の再評価

  • 教育費の国費負担(例:子ども一人につき月10万円)

などを主張しています。

自民党は道徳教科化やいじめ対策で保守色を出しつつも、全体としては行政と協調的。維新はICTや教育無償化を重視しますが、思想色は控えめです。
参政党は「知識より徳」「管理教育から人格教育へ」といった“現代的な戦前回帰”を掲げ、現代の子育て不安とリンクさせて訴求力を持たせているのが特徴です。

社会政策・ジェンダー観――「価値観の保守」という本質

参政党の社会政策で目立つのは、伝統的な家族制度や性別役割を強く重視する点です。

  • LGBT理解増進法への反対

  • 天皇の男系継承堅持

  • 戸籍制度の維持・伝統的家族観の保護

といった主張を掲げています。

自民党は法案には賛成しつつも保守派への配慮も欠かさない中間路線、維新や国民民主は実務的・法制度重視です。
参政党は「ジェンダーフリー」や「多文化共生」が国家の一体感を損なう可能性を警戒し、「国民の道徳的同質性」や「文化的連続性」を重視。単なる政治運動ではなく、“文化保守”=思想運動に近い側面も持っています。

なぜ「票」が参政党に流れたのか――“保守”の再定義と新たな器

参政党の支持層を見ると、自民党への幻滅から離れた元支持者だけでなく、これまで無党派だった層も多く含まれています。
彼らは「改革疲れ」や「多様性の過剰」によって、“安心できる価値”をもう一度求めているのです。

参政党は、制度改革ではなく「価値観の再建」を前面に掲げることで、保守の新しい“受け皿”となりつつあります。ただし、主張が過度な排他性や陰謀論と結びつけば、社会的対立を生みかねません。丁寧な党の姿勢発信と正確な情報拡散が今後ますます重要になるでしょう。

「変わりたい」ではなく「戻りたい」時代の象徴

現代の保守層は、「もっと変化したい」ではなく、「かつての安心できる社会に戻りたい」という思いが強まっています。その新たな象徴――それが今の参政党なのかもしれません。