参政党の登場――2年で国政政党、全国170名超へ
2022年、参政党は突如として政界に登場し、わずか2年で国政政党の座を獲得。2025年には全国で170名を超える議員を抱えるまでに拡大しました。
注目すべきは、大手メディアでの報道もほとんどなく、既存の組織や強力な後ろ盾も持たない中で、その存在がまるで乾いた草原に火がつくように、瞬く間に全国へ広がっていったことです。
街頭演説が生んだ「共感」と熱量
この「火」を灯した中心にあったのが、街頭演説の力です。
全国各地で行われた神谷宗幣代表の演説は、魂を込めて聴衆に語りかけるものでした。
彼の言葉は単なる政策の羅列ではなく、「子どもたちの未来を守りたい」「この国を誇れる国にしたい」「日本国と日本人への愛をもう一度思い出してほしい」といった熱い想いで構成され、聴く人の胸に直接響きました。
そのメッセージはSNSやネットを通じて一気に拡散し、「もう一度この国を自分たちでつくり直そう」という原初的な意志に火をつけたのです。
無党派層が動いた――「変わらない」から「変えられるかもしれない」へ
これまで「無党派」とされてきた人々――つまり政治に失望し、投票所から遠ざかっていた層にとって、参政党の登場は「やっと自分の声が届いた」と感じられる出来事になりました。
「どうせ変わらない」と諦めていた沈黙は、次第に「自分たちでも変えられるかもしれない」という希望へと変わりつつあります。
「自分たちの言葉」で語る政治
参政党の最大の特徴は、「自分たちの言葉で、自分たちの問題を語る」スタイルにあります。
難解な専門用語や上から目線の説明はせず、「なぜそれが必要なのか」を自分たちの生活と重ね合わせて語る。この姿勢が多くの共感を集めています。
SNSと草の根ボランティアが支える自発的な広がり
さらに、SNSでの情報発信と、草の根のボランティアによる自発的な広がりが有機的に結びつきました。
誰かに指示されたのではなく、自然発生的に、選挙期間中だけでなく日常のなかでも人から人へと参政党の理念が伝わっていきます。
批判さえも「結束の燃料」に――拡大する支持の輪
もちろん、参政党には批判もあります。しかし、その批判さえも、逆に「この党を守りたい」という支持者の意志をより強くする燃料になっているようです。
国の未来に真剣に向き合い、自分も関わろうとする人々の輪は、いま日本各地で確実に広がっています。
静かなうねりの中心に、参政党
その静かだが確かなうねり――市民の目線から生まれる大きな時代の流れの中心に、今まさに参政党が存在しているのです。
なぜ参政党は急拡大したのか?――「政治的無関心層」の声の変化
2025年7月、参政党は参院選の比例代表だけで約742万票を獲得し、全国に新たな政治勢力としての存在感を強く刻みました。これは単なる“新党ブーム”ではなく、社会の地殻が動くような大きな変化の兆しだと考えられる理由がいくつもあります。
この動きの根底には、長年“無党派”と呼ばれてきた国民層の、静かだが確かな意識の変化があります。かつて「政治に期待していない」と言われていた人々は、実際には政治を諦めていたのではなく、「どう関わればいいのか分からなかった」だけだったのかもしれません。
投票率の推移が示す「遠ざけられた政治」と、その変化
近年、国政選挙の投票率低下は深刻な民主主義の課題となってきました。
2024年の衆議院選挙では投票率が53.85%と、戦後で3番目に低い水準に落ち込み、有権者の約半数が投票所に足を運びませんでした。これは、政治がどれほど多くの人々から距離を置かれていたかを如実に物語っています。
ところが、2025年の参議院選挙では投票率が58.51%まで回復し、約5ポイントの上昇を見せました。この増加は有権者数約1億562万人のうち約528万人の増加に相当し、非常に大きなインパクトです。
特に注目すべきは、現状では有権者の10〜15%が組織票とされるなかで、この5ポイントの上昇が組織票に匹敵する力を持ちうるということ。
つまり、これだけ多くの市民が自発的に投票所へと足を運んだことで、既存の組織的な支持基盤に対抗しうる“民意の波”が生まれたとも言えます。
こうした変化の背景には、参政党の急浮上が少なからず影響を与えていると見る人もいます。長く続いた政治への無関心は、実は「関心がない」のではなく、「共感できる選択肢がなかった」ためではなかったか。
もしそうだとするなら、参政党の登場は、政治という空白に初めて火を灯した存在であり、多くの有権者に「投票する理由」を与えた画期的な出来事だったといえるでしょう。
無党派層の推移――既存政党への不信感と参政党という新たな受け皿
2024年6月に実施された朝日新聞の世論調査では、「支持する政党はない」と答えた無党派層の割合が59%に達し、安倍政権以降で最も高い水準となりました。2025年7月の参院選直前の調査でも、有権者の半数が「特に支持する政党がない」と回答しており、日本社会における既存政党への不信や距離感がいかに広がっているかが浮き彫りになっています。
このような状況下で、無党派層の間から「誰に投票すればいいのか分からなかったけれど、参政党なら投票したい」といった声が徐々に広がっていきました。ここで注目すべきなのは、こうした支持の多くが「誰かの推薦」や「組織の指示」ではなく、個人それぞれの問題意識や日々の生活実感に根ざした自発的な選択だったという点です。
なぜ他党から票が流れたのか
2025年の出口調査によれば、自民党は1人区での支持率を49%から30%へと大きく減らし、対して参政党は13%の支持を獲得しました。
これは単なる“票の横取り”ではありません。「もうこれまでの政党には頼れない」と感じた有権者が、自分たちにより近いと感じる政党へと自発的に舵を切った結果です。
立憲民主党や維新の会といった他の政党も、都市部の課題や大きな政策テーマを重視しがちです。そのなかで参政党は、地方の小さな声や家庭の不安、教育、治安など、日々の暮らしに直結する問題を正面から取り上げてきました。
こうした「自分たちの話をしてくれる政党」という実感が、多くの有権者の心を動かし、参政党への支持が広がる大きな理由となったのです。
SNSとメディア露出の相乗効果
参政党がここまで急拡大した背景には、現代型の“空中戦”――つまり、インターネット上での情報戦略の成功が大きく関わっています。
YouTubeチャンネルやX(旧Twitter)といったSNSでの情報発信によって、参政党は既存のメディアに頼らない独自の情報ルートを確立。特に若い世代や情報感度の高い層を中心に、その存在は瞬く間に広がっていきました。
さらに2025年の参院選直前には、元日本維新の会の現職参議院議員・梅村みずほ氏が参政党に加わったことが、党にとって大きな転機となりました。
彼女の加入は単に知名度アップにとどまらず、マスメディアに政党として本格的に登場できる条件を一気に満たすきっかけとなったのです。
たとえばテレビや報道番組で政党が紹介されるには、
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現職の国会議員が5人以上いること
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直近の国政選挙で比例または選挙区で2%以上の得票率があること
といった条件があります。
梅村氏の加入によって参政党はこれらの基準の一部をクリアし、選挙期間中には主要な報道番組での取り上げも急増しました。
SNSによる“ボトムアップ型”の支持拡大と、マスメディアによる“トップダウン型”の認知拡大が相乗効果を発揮し、参政党は一気に「みんなが知る政党」へとステージを上げることになったのです。
つまり、SNSによる自発的な情報拡散と、梅村氏の加入による報道露出という両輪が同時に働いたことで、参政党の存在感や政策がより多くの国民に届くようになった――これが、今日の急成長を支えた大きな要因の一つと言えるでしょう。
どのような有権者層が参政党に流れたのか――出口調査が示す“民意の変位”
1. 参政党に流れ込んだ“既存政党の支持層”
2025年7月の参議院選挙で、参政党は比例代表で742万票超を獲得し、前回選挙から倍増以上の得票となりました。特に注目されたのは、従来は他の政党を支持していた層――すなわち“既存政党の支持基盤”からも、一定数の票が参政党に流れたことです。
朝日新聞による出口調査では、かつて「保守」の看板を掲げてきた最大与党・自民党が、1人区での支持率を49%から30%へと大幅に減らした一方、参政党は比例で13%前後の支持を集めました。この数字は、単なる“無党派層の新規票”だけでは説明しきれない変化を示しています。
2. 「信頼の移動」――なぜ自民党から離れたのか
この変化の背景には、「信頼の移動」という大きな流れがあります。かつて自民党が独占していた保守層の信頼は、近年の政権運営――たとえば極端な左傾化、グローバル志向、移民政策、大企業優遇といった方針――によって、地方や中堅世代に「自分たちと距離ができた」という感覚をもたらしていました。
この隙間を参政党が突き、「日本人のための政治を取り戻す」と明快に打ち出したことで、特に地方在住者、高齢者層、子育て世代を中心に、「今までの政党にはない現実的で身近な提案がある」と評価され始めたのです。
3. 「価値観の代弁者」としての期待
参政党への支持が集まったもうひとつの要素は、「価値観の代弁者」としての役割です。
教育、食と健康、安全保障、治安、移民、土地買収問題など、マスコミや他党が“扱いづらい”テーマにも堂々と正面から切り込んでいる参政党は、「どうせ誰も言わない」と諦められてきた国民の不安や懸念を、はっきりと言葉にしました。
とくに「日本人の土地が買われている」「治安が悪化している」「伝統や誇りを教えない教育が進んでいる」といった問題意識を持つ層にとって、参政党のメッセージは単なる“代弁”ではなく、“自分ごと”として共鳴できるものでした。
4. 若年層にも広がる参政党の存在感
さらに注目すべきは、参政党の支持が若年層にも浸透しつつあることです。YouTubeやX(旧Twitter)などのSNSを活用した情報発信により、これまで政治に関心が薄いとされていた20代~30代にもアプローチが届き始めています。
「メディアでは聞けない話を知るきっかけになった」「この政党だけは本気で訴えている気がする」といった声も、大学生や若い社会人から数多く寄せられています。
5. 世代と属性を超えた「共通の語り場」
興味深いのは、参政党が若年層・高齢層・中間層といった属性を超え、「この国を守りたい」「子どもたちによりよい未来を残したい」という全世代に共通する“不安と希望”をつかみ取っている点です。
これまでの政党が一部の世代や属性にしか届かなかったのに対し、参政党は分断された社会に「共通の語り場」を提供できている数少ない政党であると言えます。
参政党の課題――“仮の支持”をどう「信頼」に変えるか
一方で、参政党の支持基盤がすでに磐石かと言えば、まだ課題も残っています。
たとえば、自民党が明確な保守姿勢を前面に押し出し、高市早苗氏のような伝統や安全保障に強い政治家が党の顔となっていた場合、今回ほど大きな支持流出は起きなかったかもしれません。
つまり今回の選挙結果は、“参政党の完全な定着”ではなく、“国民の保守的な欲求の新たな受け皿”として一時的に選ばれた側面もあります。今後、参政党がこの“仮の支持”を“継続的な信頼”に育てていくためには、さらなる政策実現力と政治的な成熟が問われることになるでしょう。