市民発で誕生した異色の政党「参政党」とは

2020年、日本の政治に新たな風を吹き込む政党「参政党」が誕生しました。
企業や既存団体の支援を受けず、プロの政治家を母体としないこの政党は、“普通の人たち”の強い想いから生まれた極めて異例の存在です。

その誕生のきっかけとなったのは、

  • 「投票したい政党がない」

  • 「このままでは日本がダメになる」

という市民の切実な声でした。

既成政党では解決できない多くの課題に直面し、「それなら自分たちで新しい政党をつくろう」と決意した市民たちは、ゼロから政治団体を立ち上げました。

中心メンバーは元地方議員の神谷宗幣氏や元財務官僚・衆院議員の松田学氏ら。
党名「参政党」は、「みんなで政治に参加しよう」というシンプルで力強い意志を体現しています。


驚異的なスピードで国政政党へと成長

設立からわずか2年。2022年の参議院選挙で、参政党は約176万票を獲得し、比例代表で1議席を得て正式な国政政党となりました。

その後も着実に勢いを増し、

  • 2024年衆院選では比例で3名が当選

  • 2025年参院選では比例で7,425,053票(得票率12.5%)、計14名が当選

となり、現在の国会議員数は18名(衆3・参15)にまで拡大しています。

この勢いは地方にも波及し、2023年統一地方選で100人超の地方議員が誕生。
2025年現在、全国で173名の所属議員、287支部を通じたネットワークを誇ります。


「日本人のための政党」を掲げる参政党の理念

参政党は自らを「日本人の、日本人による、日本人のための政党」と位置づけています。
保守的でありながらも、従来型の「上からの政治」とは異なるアプローチを志向。

公式の理念(三つの綱領)は以下の通りです:

  1. 先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる

  2. 日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する

  3. 日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる

これらには、グローバル化や経済至上主義に疑問を持ち、「国のかたち」を見直したいという強い価値観が込められています。


参政党の政策:7つの分野で見る特徴と独自性

参政党の政策は幅広く、以下の7つの柱で展開されています。

① 教育・少子化・子育て支援

  • 「家族主義」や「精神性の教育」で保守的な社会改革を目指します。

  • 月10万円の給付や教育国債の発行など、積極的な財政出動を推進。

  • 神話や郷土・道徳教育を重視し、教育を「国家の根本」と位置づけています。

  • 学校の多様化やICT教育の再評価など、現場レベルでの柔軟性も持ち合わせています。

「家族主義」×「精神性の教育」で“保守的社会改革”を志向

参政党の教育政策は、「家庭・地域・精神文化の再興」を大きな柱とし、経済的な支援と教育制度の見直しを重視している点が特徴です。
たとえば、子育て世帯への月10万円給付や教育国債の発行など、積極的な財政投入を提案しており、これは従来の“効率重視”の新自由主義的政策とは明確に異なります。

また、神話や郷土、道徳を重視する教育観は、日本の伝統的な価値観を大切にする姿勢を色濃く示しています。国家観と教育観が密接に結びついている点も、参政党ならではの特徴です。

さらに、学校選択の自由化(スクールチョイス)やICT教育の再評価など、単なる理念にとどまらず、現場のニーズに応じた柔軟な対応力も持っています。
参政党は、「教育こそが国家の土台である」という強い信念のもと、具体的かつ幅広い政策を打ち出しているのです。


② 食と健康・環境保全

  • 「いのちを守る」をキーワードに、食料主権と自然循環型社会を志向。

  • 食料自給率100%を目標に掲げ、農業支援や有機栽培の推進に注力。

  • 添加物や遺伝子組換え食品への慎重な姿勢も特徴的。

  • 地域主導・自律型社会モデルとして、中央集権からの脱却を目指しています。

“いのちを守る”をキーワードに、食料主権と自然循環型社会を志向

参政党の食と環境に関する政策は、「現実に根ざした自立」を重視しているのが大きな特徴です。
農業への支援や有機栽培の推進など、安心して暮らせる食の仕組みづくりに力を入れています。
たとえば「食料自給率100%」という高い目標を掲げているのも、ただの理想ではなく、万が一のときにも自分たちの手で食を守る“危機管理”や“安全保障”の考え方からきています。

また、添加物や遺伝子組換え食品には慎重な立場を取っていて、これは既存の農業政策にはあまり見られない「生活者の目線に立った食の安全対策」と言えるでしょう。

さらに、参政党のこうした政策は、国が一方的に決めるのではなく、地域が主役となり、自分たちで社会を支えていく“地域主導型”の社会モデルを目指しています。
この姿勢からは、「中央集権から地域主権へ」という、より分散型の社会づくりへの強い想いが伝わってきます。


③ 経済・財政・金融

  • 積極財政による生活再建を訴求。

  • 消費税の段階的撤廃や教育国債の発行を政策の中心に据えています。

  • 「内需重視」「地域経済の循環」など、国内回帰志向が強いですが、制度設計は模索段階ともいえます。

  • 中小企業・地方経済に注目し、経済を国民生活再建のツールとして再定義。

“積極財政”による生活再建を訴えるが、制度設計は模索段階

参政党の経済政策は、消費税の段階的な廃止や教育国債の発行など、積極的な財政出動と「お金の流れを増やす」リフレ政策を中心に据えています。
「内需を大切にし、地域の経済を循環させていこう」という考え方は、グローバル化によるひずみをしっかり見据えた上での、日本経済の立て直しに向けた姿勢といえるでしょう。

ただ、制度の具体的な設計や実現の可能性については、まだ不透明な部分もあり、「理想やビジョンは示されているが、これから制度化を進めていく段階」という印象もあります。

その一方で、参政党は中小企業や地方経済へのサポートにも大きな関心を持ち、経済を「国民の暮らしを立て直すための手段」として重視しているのが特徴です。


④ 国防・外交

  • 国軍化やスパイ防止法導入など「国家の主権を守る」保守路線を明確化。

  • GDP比3%の防衛費確保、土地規制や移民制限も政策に盛り込んでいます。

  • 情報・心理戦など現代的な安全保障観にも対応。

  • 開かれすぎた国の立て直しを目指し、国益を重視する姿勢です。

“国を守る意志”を正面から打ち出す骨太の保守路線

参政党の外交・安全保障政策は、とても分かりやすい主張が特徴です。
防衛費をGDPの3%まで増やすことや、自衛隊を国軍に格上げすること、土地規制やスパイ防止法の導入など、「日本の主権をしっかり守る」ことに力を入れています。

また、サイバー攻撃や世論操作といった現代の新しい脅威(情報・心理戦=超限戦)にも対応しようと、これまでになかった安全保障の視点も積極的に取り入れています。

一方で、移民の制限や、国籍・土地所有に対する規制強化については、国内外からの批判が予想されますが、参政党は「国益を守る」「必要な法律をしっかり整備する」というスタンスで、“開かれすぎた日本”の立て直しを目指しているのです。


⑤ エネルギー・インフラ

  • 地方分散型・国産回帰で持続可能性と安全保障を両立。

  • 再生可能エネルギーの地産地消や地方インフラの自立支援が特徴。

  • 電力・通信の国内回帰、サプライチェーンの見直しも推進。

“地方分散型”と“国産回帰”で持続可能性と安全保障を両立へ

参政党は、再生可能エネルギーを地域ごとに活用し、地方のインフラを自立させるなど、「地域が主役になるエネルギー政策」を重視しています。
エネルギー問題を単なる電力供給だけでなく、「日本の安全保障の基盤」として位置づけているのが大きな特徴です。

さらに、電力や通信などのインフラをできるだけ国内でまかなうことや、サプライチェーン(供給網)の見直しにも力を入れています。
こうした姿勢からは、グローバル依存から脱却し日本の技術力を見直そうとする強い意志が感じられます。


⑥ 行政・制度改革

  • 省庁再編や道州制再検討、憲法前文の書き換えなど抜本的な改革案を提示。

  • 市民が主人公の政治への転換、政府機構の透明化を目指します。

  • 地方への権限委譲や官僚人事改革など、中央依存体質の是正を訴えます。

「国家のリセット」ともいえる抜本的改革案を提示

参政党は、行政や制度の改革にもとても積極的です。
たとえば、省庁の再編成や道州制の見直し、さらには憲法前文の書き換えまで、既存の仕組みを大きく変えようとする姿勢がはっきりしています。

「国民一人ひとりが主権者である」という意識を広げ、「市民が主人公となる政治」に切り替えることを大きな目標としています。そのために、政府の仕組みをもっと透明にしたり、裁判所がより中立になるような工夫にも取り組もうとしています。

保守的な価値観を持ちながらも、制度面ではかなり思い切った改革も打ち出していて、これまでの「右」や「左」といった枠にとらわれない柔軟な発想が見えます。
また、地方への権限移譲や官僚の人事制度の改革などを通じて、中央にばかり依存しない仕組みづくりを目指しているのも特徴です。


⑦ 國體・国家アイデンティティ

  • 天皇・伝統・国語を重視し、「精神的支柱」としての国家観を再構築。

  • 神話や伝統、倫理観の再評価を通じて、「文化保守主義」の立場を打ち出しています。

  • 教育政策との連動で、文化と教育を通じた国家再建を目指します。

天皇・伝統・国語の重視――「精神的支柱」の再構築を目指す

この分野は、参政党の持つ独自の世界観がもっとも強く表れる部分です。
神話や伝統、皇室や靖国、そして倫理観など、現代の政治ではなかなか正面から議論されないテーマを、参政党はあえて前面に掲げています。

その背景には、「精神的な文化の土台がしっかりしていなければ、社会や経済もうまく成り立たない」という考え方があります。これは、単なる保守主義ではなく、“文化保守主義”と呼ぶべき新しい視点です。

また、教育政策とも深く結びついており、「文化と教育の両輪で国家を立て直す」という発想が参政党の大きな特徴となっています。
この領域をこれほど重視する姿勢は、他の政党とは明確に違っています。


草の根市民運動型――支持拡大の新潮流

参政党の支持層は、従来の政治に関心の薄かった無党派層や若年層にまで拡大しています。その理由の一つは、独自の情報発信や参加型のスタイルにあります。

  • SNSやYouTubeでの動画配信により、ダイレクトに政治メッセージを発信

  • 2025年7月時点で公式チャンネル登録者数は48.1万人

  • 全国各地での街頭演説や政策勉強会を「学び合う政治空間」として展開

  • 活動の多くが党員・ボランティアの自発性により成り立つ

2025年参院選最終日の芝公園演説には2万人超が自然発生的に集まり、「民意の新たなうねり」として報道されました。
このような“ボトムアップ型の政党運営”は日本の政党文化において異例であり、確かな共感を呼び起こしています。


課題と展望:制度化への過渡期に立つ参政党

一方、参政党の急成長には懸念や批判も付きまといます。

  • 「陰謀論的」「科学的根拠が薄い」政策への指摘

  • メディアや専門家からの批判

  • 党内での意見対立、元幹部の離党など組織運営の不安定さ

  • 国政での実行力や政策実現力の持続性も今後の課題

それでも、党はこうした指摘に向き合いながら、「制度化」への現実路線への転換も進めつつあります。“熱狂”から“持続可能な政党”への成熟を目指し、今まさにその岐路に立っているのです。

この変化が実現すれば、「市民参加型政党」の新たなロールモデルとなる可能性もあります。問われるのは、どこまで“信念”と“現実”の両立ができるか――。その行方に注目が集まっています。


草の根から再起動する「生活者主権国家」の胎動

参政党の7つの政策は、それぞれが個別分野にとどまらず、国のかたちや国民意識そのものに変革をもたらそうとしています。

  • 教育分野では「精神性やルーツを誇る若者」の育成

  • 経済や財政では「人間の暮らしと尊厳を守る仕組み」を模索

  • 地域と個人の主体性を重視し、中央集権からの脱却を目指す

  • 国防・外交では「自ら国を守る」という自主独立意識を強調

  • 環境・エネルギーでは「地元資源を活かした自律的な社会」を志向

  • 国家アイデンティティ政策は「文化的誇りや倫理観の再構築」を目指す

こうした政策群の浸透で、市民的責任感や文化的成熟、行政・政治への「関わる市民意識」の広がりが期待されます。
それは、エリート主導の国家像ではなく、「生活者の手でつくり直す新しい日本」の姿です。

終わりに:「既存の政治への違和感」に共鳴する存在

参政党の登場は、単に新しい政党が増えたという出来事ではありません。
長年、既存政治に閉塞感や諦めを抱いてきた人々への明確なリアクションでした。

  • 「政治は変わらない」「声は届かない」――そんな無力感を打ち破り、

  • 「自分たちの手で社会を変えていけるのでは」という問いを日本社会に投げかけたのです。

無党派層や若年層を中心に「共鳴」が広がり、自ら学び・考え・行動する新しい市民の姿が芽生えつつあります。

「参政」という名前の通り、民主主義の原点は“参加すること”。
その本質を生活の現場に引き戻す参政党の挑戦は、今まさに日本社会に問いかけられています。

今後、その理念がどこまで実行力を持ち、社会に根を張れるのか――。
私たち一人ひとりにとっても「自分自身の未来を考える入口」になるかもしれません。


参考リンク・出典