国政の表舞台では見えにくいが、実際の暮らしに直結するのは「地方政治」である。参政党はこの点にいち早く着目し、全国の地方議員ネットワークを基盤に、地元に根差した課題解決に取り組んでいる。

2025年7月時点で、同党所属の地方議員は全国で150名を超え、47都道府県すべてに支部を設置。参政党が「草の根政党」と呼ばれる理由は、単に理念を語るだけでなく、各地域で実務的な政策提案と行動を積み重ねていることにある。

学校給食の質を問う――「日本の食と子どもを守る給食プロジェクト」の現場から

参政党の「日本の食と子どもを守る給食プロジェクト」は、2024年に始動し、全国の地方議員133名が連携して125自治体を対象に給食の現状調査を実施した。この活動は、単に“給食費の無償化”を推進するものではなく、「子どもたちにとって本当に望ましい給食とは何か」を多角的に検証する取り組みである。

その一環として、東広島市の山田貴之市議(参政党)は、インスタグラムを活用した市民アンケートを実施し、約1,000人からの意見を収集。問いは「給食無償化に賛成か、反対か?」というシンプルなものだったが、結果は意外にも反対:68%、賛成:32%と、一般的なメディア報道とは異なる傾向が示された。

反対理由として多く挙げられたのは、「無償化による品質の低下」への懸念だった。

  • 「質が下がり、税金の無駄になるのでは」

  • 「安い材料に頼らざるを得ず、添加物の多い給食になりそう」

  • 「無償化に飛びつく前に、質の保障を考えるべき」

 

一方、賛成派からは「経済的負担の軽減」や「子育て支援としての必要性」が強調された。

  • 「7人に1人が貧困と言われる時代、まずは皆が食べられる環境を」

  • 「格差是正の観点からも必要な支援」

興味深いのは、意見が単なる“賛否の対立”にとどまらず、「質か無償か」ではなく「どうすれば質の高い給食を持続可能に提供できるか」という視点に向かっている点だ。

山田市議は、この結果を踏まえ、今後以下の3点を重視していく方針を表明している。

  1. 質を最優先にした制度設計
     給食の無償化そのものより、まずは質を守るための財政的裏付けを求める。

  2. 地産地消と食育の強化
     地元産の安全で栄養価の高い食材を活用し、地域経済と食育を両立させる。

  3. 本当に支援が必要な家庭への重点的支援
     一律の無償化ではなく、家庭環境に応じた柔軟な支援の設計を提案。

このように、参政党の地方議員たちは、給食の問題を通じて「地方自治の役割」や「教育・福祉の再設計」という広範なテーマに踏み込んでいる。
単なる制度改革ではなく、現場の声を起点とした政策提言が政治の現実を動かす――そうした兆しが、地方から静かに広がり始めている。

なぜ、メディアは取り上げないのか?――“見えない政治”の現場から

これらの取り組みは、一見すれば小さな地域運動に過ぎないように見えるかもしれない。だが、住民と議員が直接つながり、現場の課題に対して自らの手で改善策を提案していくプロセスは、民主主義の原点とも言える。こうした積み重ねこそが、自治体運営の質を高め、市民の政治参加意識を底上げする重要な土壌となる。

にもかかわらず、こうした草の根の政治活動が、全国紙やテレビといった大手メディアで取り上げられることは稀だ。その背景にはいくつかの要因がある。ひとつは、報道資源が都市部や国政に集中しており、地方政治にまで十分な人員や時間を割けないという構造的な事情。もうひとつは、“大きな対立”や“派手な発言”といった報道映えする素材が乏しく、メディアのニュース価値基準に合いにくいという問題だ。

だが、情報の時代は変わりつつある。

地方議員自身がSNSを使って活動を発信し、市民との対話を積み重ねる光景は、今や全国各地で見られるようになった。参政党の地方議員の中にも、YouTubeやInstagram、地元コミュニティラジオなどを活用し、自らの政策提案や現場レポートを定期的に発信している議員が多数いる。

こうした「メディアを待たない情報発信」は、地方の政治活動に対する市民の関心を直接喚起し、支持の裾野をじわじわと広げる手段として機能している。実際、SNSを通じて発信された小さな成功事例が地域内外で拡散され、それが次の市民運動や政策提言につながるケースも少なくない。

大手メディアに取り上げられないからこそ、当事者が語る一次情報の重みが増す。自分たちの言葉で語り、自分たちの手で届ける。その積み重ねが、無関心を越えて関心を生み、やがて信頼と支持へと変わっていく――。

地道で、丁寧で、地域に根差した政治こそが、いま再評価される時代にあるのかもしれない。